2025-07-25

個人事業主と法人、どっちが得?税務・社会保障の賢い選び方

個人で事業をしていて少し軌道に乗ってくると「法人化したほうがいいのかな?」と誰しも思うはずです。
それとも、個人事業主として続けながらも「もっと効率的な節税方法はないだろうか?」と考えてしまいます。

節税に関する問題はフリーランスにとっても常につきまとう話題ですが、ここで個人事業主と法人の税務・社会保障制度を徹底比較し、どんな状況なら最適な選択ができるか、経験を踏まえてわかりやすく解説していきたいと思います。

税金の仕組み:そもそも何が違うの?

個人事業主の税金構造

個人事業主の支払う税金は、主に所得税です。この所得税には「累進税率」という仕組みが使われていて、稼げば稼ぐほど税率が上がっていきます。

具体的には5%から45%まで段階的に上昇し、年収が1,000万円を超えると30%以上の税率になってしまいます。さらに、事業所得だけでなく、もし他に給与所得などがあれば、それらも合算して課税される「総合課税」という制度になっています。

つまり、事業が順調に成長して所得が増えれば増えるほど、税負担がどんどん重くなってしまうんです。これが個人事業主の宿命とも言える特徴です。稼げば稼ぐほど税負担が増えるとは痛いですね。

法人の税金構造

一方、法人の場合はどうでしょうか?法人税率は基本的に一定で、中小法人なら年800万円以下の利益部分で約15%、800万円を超える部分で約23.2%となっています。

ここがポイントなのですが、法人では会社の利益と、あなたが役員として受け取る報酬は別々に課税されます。会社の利益には法人税が、役員報酬には所得税がかかるという二段階の構造になっているんです。

この構造を上手に活用すると、所得分散による節税効果を得ることができます。

マイクロ法人の隠れたメリット

最近よく耳にする「マイクロ法人」。節税対策の方法などでも必ずといっていいほど出てきます。この小規模な法人として、実は多くの税務メリットがあります。

所得分散の威力

例えば、個人で年間1,000万円の所得がある場合と、法人で500万円の利益を出し、役員報酬500万円を受け取る場合を比較してみましょう。

個人事業主なら1,000万円に対して高い累進税率がかかりますが、法人化すれば500万円ずつに分散できるため、それぞれに低い税率を適用できます。結果的に、総税負担が軽くなるケースが多いんです。

経費の範囲が広がる

法人になると、個人事業主では認められにくい経費も適切に計上できるようになります。出張費、接待交際費、役員報酬、さらには将来の退職金まで、経費として認められる範囲が格段に広がります。

また、赤字になってしまった年があっても、法人なら10年間にわたって赤字を繰り越し、将来の利益と相殺することができます。これは個人事業主にはない大きなメリットです。

個人事業主だって負けてない!効果的な節税戦略

「じゃあ法人の方が絶対いいじゃん」と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。個人事業主にも強力な節税戦略があります。

青色申告特別控除の活用

まず基本中の基本が、青色申告特別控除です。最大65万円の控除を受けられるので、これだけでも年間10万円以上の節税効果があります。

小規模企業共済で大幅節税

小規模企業共済は、個人事業主にとって最強の節税ツールの一つです。年額最大84万円まで掛金を支払え、その全額が所得控除になります。これは実質的に、国が認めた「経営者の退職金制度」なんです。金額も自由に変えられるし、利益が出た年はまとめて一括で積み立てることも可能です。あとiDeCoなら、掛金全額が所得控除になる上、運用益も非課税です。将来の年金不安を解消しながら、今の税負担も軽減できる一石二鳥の制度です。

経費計上のコツ

家事関連費の按分計算も重要です。自宅を事務所として使っているなら、電気代、ガス代、家賃の一部を経費にできます。車を事業に使っているなら、ガソリン代、保険料、減価償却費なども事業経費として計上可能です。

法人化のメリット・デメリットを正直に話そう

メリット

法人化の最大のメリットは、やはり所得分散による税率の最適化です。さらに、経費認定の範囲拡大、退職金制度の活用、赤字繰越期間の延長(10年間)、場合によっては消費税の免税期間の再設定も可能です。

デメリット

ただし、デメリットも正直にお伝えしなければなりません。まず法人の役員報酬ですが、いわゆる社長の給料ということですがこちらは年度の途中では変更できません。今年は儲かりそうだから役員報酬増やしておこうなどと考えがちですがそれらは出来ないことになってます。自分もそうだったのですが、法人にして役員報酬を決める際は慎重に行ったほうがいいです。その他にまず、法人住民税の均等割が年間約7万円かかります。これは赤字でも支払う必要があります。また、税務申告が複雑になるため、税理士費用も個人事業主の時より高くなるでしょう。

そして何より大きいのが、社会保険の強制加入による負担増です。これについては次の章で詳しく説明します。

厚生年金のメリットを数字で見てみよう

法人化すると社会保険料の負担が増えますが、将来受け取れる年金も大幅に増加します。これはどちらを
とるかに分かれると思います。一人会社だと社会保険の負担が法人と個人で折半なので感覚的には全額負担と
なんら変わりないかと思います。これが後々、ボディーブローのように効いてきます。売上が上がってるときは
いいんですがね。

将来の年金受給額の違い

国民年金のみの場合、満額でも年間約81万円(月額約6.8万円)しか受給できません。

しかし、厚生年金に加入し、例えば役員報酬月30万円で40年間加入した場合、年間約200万円(月額約16.7万円)の年金を受給できる計算になります。

その差は年間約119万円。生涯で考えると2,000万円以上の差になる可能性があります。

その他の手厚い保障

厚生年金には年金以外にも魅力的な保障があります。

病気やけがで働けなくなった時の傷病手当金は、標準報酬月額の約2/3を最大1年6ヶ月受給できます。また、万一の時の遺族厚生年金、出産時の出産手当金など、国民健康保険にはない手厚い保障が用意されています。

社会保険料の実負担額

2024年基準で計算すると、役員報酬別の社会保険料負担は以下のようになります:

  • 役員報酬月20万円:個人負担約2.85万円
  • 役員報酬月30万円:個人負担約4.35万円
  • 役員報酬月40万円:個人負担約5.8万円

⠀確かに負担は大きいですが、これは将来への投資と考えることもできます。

国民年金だけでも大丈夫!老後対策の戦略

「社会保険料が高いから法人化はちょっと…」という方も安心してください。国民年金でも十分な老後対策は可能です。

国民年金基金で年金を手厚く

国民年金基金なら、月額最大6.8万円の掛金で、将来の年金を大幅に増やせます。掛金は全額社会保険料控除になるので、節税効果も抜群です。

例えば月額3万円を30年間拠出すれば、将来毎月約6万円の年金を終身で受け取れます。

iDeCoで資産形成

個人事業主なら年額81.6万円まで拠出可能(国民年金基金と合算)。月額5万円を25年間拠出し、年利3%で運用できれば、約2,190万円の資産形成が可能です。

小規模企業共済は退職金代わり

月額7万円を30年間拠出すれば、約3,200万円を退職金として受け取れます。しかも掛金は全額所得控除になります。

付加年金は絶対にやるべき

月額わずか400円で、将来の年金を毎年9.6万円増やせる付加年金。これは投資利回りで考えると驚異的な制度です。40年納付すれば、たった2年で元が取れる計算になります。

繰下げ受給で年金を増額

65歳から75歳まで年金受給を遅らせれば、84%も年金額が増額されます。国民年金満額なら年間約149万円の受給が可能になります。

総合的な老後資金形成の実例

年収600万円の個人事業主が最適な老後資金形成をした場合の例をご紹介します。

年間投資配分

  • 国民年金基金:48万円
  • iDeCo:36万円
  • 小規模企業共済:84万円
  • 合計:168万円(全額所得控除)

⠀この場合、所得税・住民税の軽減効果は年約50万円。実質負担は年約118万円で済みます。

30年継続した場合の効果

  • 国民年金基金:月額約8万円の年金増
  • iDeCo:約1,750万円の資産形成
  • 小規模企業共済:約3,200万円の受給

⠀合計で月額約8万円の年金増加と、約5,000万円の資産形成が可能です。

どっちを選ぶべき?判断の分岐点

年収別の目安

一般的に、以下のような目安で判断できます:

  • 年収400万円以下:国民年金+各種制度活用が有利
  • 年収400-800万円:個別検討が必要(家族構成・事業形態による)
  • 年収800万円以上:法人化メリットが大きい

⠀社会保険料と将来受益のバランス

月額30万円の役員報酬の場合、年間約104万円の社会保険料負担(会社負担分含む)に対し、将来の年金増加分は年額約80万円。約13年受給すれば元が取れる計算です。

制度変更への対応準備

2024年10月から年金制度改正が始まり、厚生年金の適用拡大が進んでいます。今後も制度変更が予想されるため、長期的な視点での準備が重要です。

50代後半からの資産形成戦略

「もう50代後半だから手遅れかも…」と思っている方、そんなことはありません!時間は限られていますが、効率的な戦略で十分に資産形成は可能です。小規模企業共済は50代後半からでも15年拠出可能です。総額1,260万円拠出で約1,400万円受給。年約25万円の節税効果も得られます。iDeCoなら月5万円の15年拠出で約1,200万円の資産形成が可能(年利3%想定)。付加年金は月400円で確実にリターンが得られる最強の投資です。15年納付でも年3.6万円の年金増になります。

一番は収入源の多様化

50代後半からは、これが重要だと思います。収入の分散といいますか、多方面からの収入を得るということです。

まとめ:現状ベストな選択は?

個人事業主か法人か、正解は人それぞれです。

法人化は確かに多くのメリットがありますが、社会保険料の負担や設立・維持コストも発生します。一方、個人事業主でも適切な制度を活用すれば、十分な節税と老後対策が可能です。

重要なのは、事業の規模、将来の展望、家族構成、リスク許容度などを総合的に考慮すること。そして何より、どちらを選択するにしても、正しい知識を持って長期的な視点で取り組むことが成功の鍵です。
投資をするにせよ積立するにせよ、いずれの場合の思い立ったらすぐ取り組むのがいいかと思います。

一歩ずつでも着実に進んでいけば、必ず理想の未来に近づけるはずです。

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