2025-08-17

「好きなこと」と「仕事」を分離する〜自分らしさを守るための価値観転換〜

変化する働き方の常識

先日本屋に寄って棚を眺めていると”静かな退職”という本が目に止まってきた。

去年くらいから働き方について考える機会が増えているせいかこの手の本やネット記事についつい興味がそそられる。AIの普及、価値観の多様化、そして「Quiet Quitting(静かな退職)」という新しい現象。これまで「当たり前」だと思っていた働き方が、実はそうでもないかもしれないと気づかされる場面が多くなってきたように思う。そんな中で、「好きなこと」と「仕事」の関係について、少し違った角度から考えてみたい。

「好きなことで生きていく」という理想の現実

「好きなことで生きていく」「情熱を仕事にしよう」──近年よく聞くフレーズですよね。確かに情熱を仕事にできれば理想的に思えるし、毎日がやりがいに満ちた生活を送れそうです。でも、長年フリーランスとして働いてきた経験から言えるのは、この「理想」には思わぬ落とし穴があるということです。

好きなことを収入源にすると、どうしても経済的プレッシャーが生じます。「今月の生活費を稼がなければ」「クライアントの要望に応えなければ」「市場で売れるものを作らなければ」──こうしたプレッシャーが、本来純粋だった情熱に少しずつ影響を与えていくように思います。

具体例を考えてみましょう。絵を描くのが大好きで、週末になると何時間でもキャンバスに向かっていられる人がいたとします。純粋に表現することの喜びを感じ、誰に見せるわけでもなく、ただ自分の内側から湧き上がるものを形にしている。そんな時間は、きっととても充実しているはずです。ところが、この絵で生活費を稼ぐことになったらどうでしょうか。売れる絵を描かなければならないプレッシャー、市場のニーズを優先しなければならない場面、依頼主の希望に合わせた妥協。気がつくと、あの純粋な喜びはどこへ行ってしまったのか──そんな経験をしたことがある人は、意外と多いんじゃないでしょうか。

「つまらない人間」という誤解を解く

「仕事にやりがいを求めないなんて、つまらない人間に聞こえるかもしれない」

そう思う気持ち、よくわかります。でも、ちょっと考えてみてください。やりがいを仕事に求め続けることで、逆に疲れてしまう。なんていうこともおきてくると思います。

毎日の業務に意味を見出そうと必死になったり、モチベーションを維持するために自分を鼓舞し続けたり。時には「この仕事は自分に合っていないのかも」と悩んだり。

そうした精神的な負担から解放されて、仕事はあくまで「生活を支える手段」として割り切る。そして、本当に大切にしたいものは別の場所で育む。実は、これこそが最も自由で持続可能な生き方なのかもしれません。
じぶんもようやく最近、そう思えるようになってきました。

分離することで得られる真の自由

自分の好きなことを守るためには、それを”お金から切り離す”のが一番自由──この考え方は、一見逆説的に聞こえるかもしれませんが、実はとても合理的でもあります。

生活費を安定した別の収入源で確保できれば、好きなことには一切の制約がありません。売れるかどうか心配する必要もなく、他人の評価を気にする必要もなく、ただ純粋に自分の興味や情熱に従って活動することができます。

クライアントの無理な要求に応える必要もなく、市場のトレンドに合わせる必要もなく、定期的に収入を得るために妥協する必要もない。自分のペースで、自分の価値観のままで、本当に大切にしたいことを追求できる。

これって、実はとても贅沢で自由な生き方だと思います。

人生後半戦での価値観転換

若い頃は「好きなことで成功したい」という気持ちが強いものです。それは自然なことだし、決して間違いではありません。でも、経験を積むうちに、その理想と現実のギャップを実感することが増えてきたはずです。

人生後半でこの価値観を採用することには大きなメリットがあります。ある程度の経済的基盤が築けているからこそ、精神的な余裕を持って物事に取り組めるようになります。長期的な視点で働けるということは、短期的な成果や収益に追われることなく、持続可能なペースで自分らしい働き方ができるということでもあります。

今、私たちはAIの普及という大きな変化の波の中にいます。色んなものの価値観が変化してきている時代だからこそ、自分も変わっていかないとこの先のAI時代には対応できないかもしれません。

AIに対抗するのではなく、AIと共存しながら、自分の本質的な価値を見つめ直す。そのためには、経済的プレッシャーから解放された状態で、「本当に自分が追求したいことは何か」を探求する時間や余裕が必要です。

従来の「スキルを磨いて市場価値を上げる」という発想だけでは限界があるかもしれません。むしろ「自分らしさ」や「純粋な興味関心」を大切に保つことが、長期的には重要な差別化要因になる可能性もあります。

では、実際にどうやってこの価値観を実践していけばいいでしょうか。

まずは、現在の収入源を安定させることが重要でしょう。完全に好きなこととは切り離された、安定した収入の確保。これが土台になります。まあこれが一番難しい問題ではありますが。

その上で、好きなことには一切の収益性を求めない時間を作ってみる。週末の数時間でも、平日の朝の時間でも構いません。その時間は完全に「自分のため」に使う。誰かに見せるためでもなく、評価されるためでもなく、ただ純粋に楽しむための時間です。こんな生き方を実践していくと、従来とは違う種類の充実感を発見できると思います。

仕事での達成感とは別の、もっと静かで深い満足感。誰かに認められるためではなく、自分自身が心から楽しめることを続けることの喜び。経済的なプレッシャーがないからこそ味わえる、純粋な創造の時間。

結果的に、仕事はあくまで生活を支える手段として割り切り、本当の充実感や創造性は別の場所で育むことができる。両方がより健全な形で続けられるという、理想的な状態が生まれるんです。

自分らしい道を見つける

「好きなこと」と「仕事」を分離するという考え方は、すべての人に当てはまるわけではないかもしれません。でも、少なくとも一つの有効な選択肢として、考えてみる価値はあると思う。

特に、これまで「好きなことで生きていく」という理想に疲れを感じている方や、人生後半戦での新しい働き方を模索している方にとって、きっと参考になるはずです。

時代の変化を敏感に察知して、自ら変わっていこうとする姿勢こそが、最大の強みになるんじゃないでしょうか。大切なのは、社会の常識や他人の期待ではなく、自分自身が本当に求める生き方をみつけることが
何より大事なことかと思います。

関連記事